2020年の特別展示
会期:2020年1月5日(日)~12月25日(金) |
本年度は、徳富蘇峰が所蔵した印章を一堂に取り揃え、ご紹介します。 姓名、雅号印からユニークなハンコまで、文人・蘇峰が残した印章の世界をお楽しみください。
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企画展示
徳富蘇峰が東条英機首相に贈った「三顆組印」の印影 |
徳富蘇峰(1863~1957)は太平洋戦争中、言論報国会会長などを務め、言論界の長老として、首相・東条英機(1884~1948)の後ろ盾となっていた。この印影は、蘇峰が戦況不利となった昭和18年4月に発案し、19年5月、東条内閣総辞職の約2か月前に贈り届けた3顆組印のもの。印材は「法隆寺古材」を使用し、蘇峰とも親しい篆刻家・高畑翠石(たかはたすいせき・1879~1957)に彫らせた。蘇峰は東条にふさわしい「18」の雅号を提案し、東条は「謙堂」を選んだ。「慢(心)は損を招き、謙は益を受く。首相極位故に退一歩・謙堂」と蘇峰は、最高位にある首相の一歩退いた穏妥な号の選択を喜んだ。人にハンコを贈ることは、相手の人柄や性格を熟知し、印の知識も必要とする”力仕事”だという。戦況が刻々と変化する中、蘇峰はどのような心境で時の最高権力者・東条の雅号印を用意したのだろうか。恐らくは、愛する日本国の行く末を憂い、戦争の指揮を執る東条を少しでも励まし元気付けたい、そんな一心で贈ったのだろう。関防印の印文「天空海闊=気持ちがさっぱりとして、前が開けていること」にその心の内を見る気がする。印章こそ残されてはいないが、綺麗に押された印影に、戦後75年の時の流れや時代を感じていただけるのではないかと思い、本展「印章展」に合わせて展示を行いたい。 |
「天空海闊」(関防印)・「臣英機印」(姓名印)・「謙堂」(雅号印」